個人で許可を取得し、法人化した場合の手続きについて
最初は個人事業主として、小さく事業を開始し、ある程度結果が出てから会社を設立するということはよくあることです。
しかし、許可が必要な業種の場合、簡単にはいかない場合があるので注意が必要です。
産業廃棄物収集運搬業もそうです。
というか、基本的に許可の必要な業種は原則同じですが、個人での許可を法人に引き継ぐことはできません。
ですから、「来年会社を設立する」というなら、ちょっと頑張って、先に会社を設立してから許可を取った方が後々楽です。
とはいっても、それぞれ事情がおありでしょうから、個人事業で産廃業をスタートすることも全く否定はしませんし、ビジネスチャンスを逃さないために少しでも早く、というのであればその方がいいかもしれません。
この記事では、そんな時に、手続き上、ちょっと迷ってしまうようなことを解説し、解決していきたいと思います。
産業廃棄物収集運搬業の個人の許可は法人に引き継げません
繰り返しになりますが、個人で取得した産業廃棄物収集運搬業の許可は、法人に引き継ぐことはできません。
個人と法人は全くの別人格として考えられているので、当然といえば当然のことです。
個人で取得した許可を別の個人に引き継げないのと同じことです。
とはいうものの、本人が代表取締役で、例えば一人で会社を設立した場合は、心情的には、「そのままの許可でいいじゃないか」と思うのも当然です。
しかし、こればっかりはどうしようもありません。
面倒でも、再度、新規許可申請手続きを取らなくてはなりません。
産業廃棄物収集運搬業の許可の有効期限は5年間です。
5年後に更新申請をしなければならないので、法人化するならそのタイミングに合わせればロスが少なくて済むかもしれません。
産業廃棄物収集運搬業の講習会の修了証の取り扱い
法人として、新規に許可申請するときの講習会の修了証の取り扱いはどうなるのでしょうか。
既に、受講しているので、不要であるといいたいところですが、新規許可申請時には、有効な新規講習会の修了証が必要です。
場合によっては、受講し直さなければなりません。
大変面倒ですね。
「場合によっては、」ということは、そのままの修了証が使える場合もあります。
新規講習会の修了証の有効期間は、5年間です。
新規許可申請は、その5年の間に行わなければなりません。
つまり、修了証を入手して、すぐに個人で許可申請し、修了証の有効期間内に会社を設立し、法人で新規許可申請する場合は、新たな講習会の修了証は必要ありません。
つまり5年以内であれば、最初の講習会の修了証が使えます。
いったん有効期間が過ぎてしまってから、法人の新規許可申請をする場合は、再度新規講習会を受講しなければなりません。
また、更新講習会の修了証の取り扱いですが、自治体によって違いがあるようです。
広島県の場合は、法人で新規申請する場合は、個人での更新講習の修了証の有効期間内であっても、再度新規講習を受講しなければなりません。
とにかく、新規許可申請には、有効な新規講習会の修了証が必要ということです。
これはお隣の岡山県でも同じです。
しかし、他の自治体では、有効な更新講習会の修了証で、新たに設立した法人の許可申請が可能であるという話を聞いたことがあります。
広島、岡山以外の方は担当窓口に確認した方が確実です。
産業廃棄物収集運搬業の許可は新規法人設立で実績が全くなくても大丈夫
法人で産業廃棄物収集運搬業の許可を申請するときには、直前3年かの財務諸表を提出しなければなりません。
しかし、新規に法人を設立した場合は、まったく実績がありません。
そのような場合にはどうすればよいでしょうか。
それは、なくていいんです。
個人事業での実績も必要ありません。
申立書等で「新規に設立したので提出できません」で構いません。
事業を開始するために必要な資金とその調達方法を提出しますが、それに無理がなければ問題ありません。
会社の立ち上げ当初は、大抵の場合は、借入金等もあり、負債が多いものです。
なので、その辺りは配慮してくれているという感じです。
ただし、これも自治体によっては取り扱いが変わるようで、厳しいところもあるようです。
ちなみに、「積替え保管あり」で許可申請すると、ちょっと事情が変わります。
実績がない場合には、事業計画書とか収支計画書とかいろいろ要求されます。
早く許可が欲しい、スピード重視、というのであれば、とりあえず「積替え保管なし」で許可申請したほうがいいかもしれません。
運搬車両や駐車場は個人で使用していたものと同じものを使用する場合
産業廃棄物収集運搬業を営む個人事業者が、法人を設立しそのまま事業を引き継ぐ場合には、おそらく、廃棄物を運搬する車両も、駐車場も、事業所もそのまま同じものを使用する場合が多いのではないでしょうか。
許可を申請する場合には、これらの使用権限を有していなければならないため、そのままでは申請できません。
車両の場合は、所有者の名義変更をするか、使用者を変更するか、若しくは個人から法人へ賃貸借又は使用貸借の契約を締結する必要があります。
駐車場や事業所も同様の考えで使用者を法人に変更しなければなりません。
駐車場や事業所が賃貸の場合は、貸主と相談して、法人として賃貸借契約を取り交わすように変更しなければなりません。
新規許可申請のためには上記が必要となりますが、これらを行うと個人で取得していた許可の要件を満たさなくなってしまいます。
ということは、法人の許可を申請するための準備段階で、個人事業として営業はできなくなるのでしょうか。
法人の許可が下りるまで個人事業を続けることはできます
大丈夫です。個人事業を続けることはできます。
といっても自治体によって差があるようですが、少なくとも広島県(お隣の岡山県も)の場合は、大丈夫です。
法人で許可が下りるまでの間は、個人事業を継続することができます。
法人での許可申請のとき、「法人の許可がおりたら個人の許可は速やかに廃止します」という申立書を提出し、実際に許可が下りたら速やかに個人の許可の廃止届を提出することになります。
事業の継続性を重視し、空白期間が生まれないようにとの配慮されています。
ご安心ください。
申請時には、運搬車両の写真を提出しなければなりません。
これは、他の業者で使用されているものではないことを確認する、という意味もあります。
車両に他の登録番号が記載されていてはアウトです。
個人が法人化した場合は、個人で取得した許可番号が記載されていますが、これも、法人の許可が取れ次第速やかに書き換える、ということ申し立てておけば大丈夫です。
お役所仕事と批判することもありますが、なんでもかんでも杓子定規に判断されているわけではなく、うまい具合に対応してくれることもあります。
以上、個人で産業廃棄物収集運搬業の許可を取っていた場合の法人化するときの手続きについての解説でした。
ご質問や不明な点があれば、お問い合わせフォームからお気軽に連絡ください。